南房総・鴨川市天津鎮座 | 源頼朝公が伊勢の神宮より御分霊を勧請し創建された八百余年の歴史をたたえる神社

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房州伊勢の宮 天津神明宮 三月の神訓   気負わず 気取らず 無理をせず
禰宜日記
〔2018/04/20〕 ビジョンなき地域の悲劇
午後6:30より午後8時まで鴨川市市民会館にて、いま鴨川で問題となっているメガソーラー発電所事業に関する、業者による説明会が行われた。
果たしてどれだけの人たちが集まるのか、まずはそこにも注目していたのだが、反対派だけでなく、多くの市民が集まった。この事業に関わる土建業界の方々の姿も多く見られた。おそらく全部で300人くらいはいたのではないだろうか。

プログラムとしては、市長挨拶の後、業者による事業の説明が各パートに分けて行われ、その後、質疑応答の時間が設けられた。
まぁ、流れとしては、一般的な説明会だったと思う。

しかしながら、結論から言うと、この説明会には本当にガッカリした。怒りを通り越して、あきれてしまった。
だれがこの説明会を考えたのだろう。あまりにセンスがなさすぎる。

反対派の人たちの怒号が飛び交う中、説明は進んでいったが、業者の人たちはかなり高圧的な態度で臨んでいて、それがさらに反対派を逆なでしてしまった。
これだけの大規模事業なのだから、危機管理の専門家をつければいいのに、それもいないようなようすだった。

冷静に見て、設計を担当されている方の話は非常にフェアであったとは思った。
実際、その方の説明にはほとんどヤジが飛ばなかった。

しかしながら、冒頭の事業説明のあらましを説明したAスタイル社長の話は本事業とは関係のない、同社の歴史やコンセプトの話がほとんどで反対派からは「そんなの、鴨川に関係ないだろう!(説明会の)時間稼ぎだろう!」というようなヤジが聞かれた。
また、終盤の事前質疑に対する回答も配布された資料を棒読み風に朗読するだけで、悪意のある時間消化ととらえられても致し方のない進行であった。

おそらく今日の説明会、業者としては法令に則り、しっかりやっている。工法も十分に安全や環境に配慮している。だから、違法行為でもないし、問題はない事業なんだ。
そういうことを言いたかったのだと思う。

確かにそれは私も認める。
反対派は残念ながら法律を盾にしても負けてしまう。
この説明が本当であれば、適法の中で行われているのはその通りであろう。

しかしながら、事業においてはコンプライアンス(法令遵守)のほかに、もう一つの守るべきたいせつなものがある。
それは事業のビジョンであり、企業のモラルである。

かつて二宮尊徳が「道徳なき経済は罪悪であり 経済なき道徳は寝言である」ということばを残しているように、道徳が欠落した経済は世の中、そして未来に対する「犯罪行為」である。

皮肉にも、事業説明のトップバッターであった、Aスタイル社長の話にそれは語られていた。
一見事業とは関係のない、会社の歴史や、東日本大震災発災時の同社の動きなど、また、この事業を「ベンチャー」ということばでコンセプトを表現したところなど、それが事業のビジョンであり、企業のモラルであり、実はコンプライアンスとともに、事業の根底を成す最重要な部分なのである。

だが、実態はどうであろう。
本当にこの事業は「ベンチャー」なのか。
配布された同社のパンフレットにも記されていた、地球環境を配慮した、未来志向の事業なのだろうか。
残念ながら、私は社長が述べた会社の姿勢、社風、事業コンセプトとは真逆のものを感じてしまった。

ここからは推論であるが、Aスタイル社は現時点において、このように住民から反発の声が上がっていく中、それを押し切ってまで、適法だからと言う理由で、事業を進めたいとは本音では思っていないように私には思える。
Aスタイル社長の人間性は決して悪くはないという印象をもった。しかし、本事業がジョイント事業体で行われ、おそらくAスタイル社はそのフロントを務める役回りになってしまった。だから、土地もAスタイル社が買収を進めた。しかしながら、その資金はAスタイル社自身では到底賄うことができる額ではなく、どこかから投資された。
そのため、同社はある意味操り人形のように、大きな流れに従うしかない状況に追いやられているのではないか。
あくまでも私の推測であるが、そんな構図を想像した。

私はAスタイル社長の本音をぜひ聞いてみたい。
そして、この事業がどのような経緯で、どのような理由で、起案され、推進されてきたのか。
そんな事情をしっかりと正確に把握したい。

その上で、事業のビジョン、企業のモラルをもう一度見つめ直し、計画変更をぜひ促したい。

私は今回のメガソーラー事業については反対の立場を明確にしており、今回の説明会でさらにその思いを強くしたが、だが、中止だけすれば良いとは思っていない。
以前の日記でも記したように、鴨川市の山林はいまのまま放置しておいて良いものでもない。手を入れなければ、どんどん山林は荒廃し、返って災害の元にもなり得る。
また、仮に今回のメガソーラーが中止になったとしても、おそらく近い将来、第2の大規模開発事業が出てくることだろう。

また、今回の事業においては、多くの事業者が関わっているだろうし、彼らの生活がかかっているということも無視してはならない。

それらを踏まえた上で、例えば、Aスタイル社がもつ、バイオマス発電の技術をむしろ今回のメガソーラー計画に置き換えて、鴨川市で先進的な事例として導入することはできないのだろうか。
発電事業とともに、森林保全にもつながり、一石二鳥のプロジェクトにもなる。
さらに、大蓉工業グループが推進している、ミニトマトなどの農業の事業をこの地区にも導入し、中山間地域における、新しいかたちの農業を展開して一次産業の復活を図ってはどうだろうか。
そんな事業の方がよほど「ベンチャー」と言えるのではないだろうか。

繰り返しになるが、この説明会によって、事業者のイメージは著しく、自らの手によってダウンさせてしまった。
反対派はもちろん、どちらかというとおとなしい中立な市民からも説明会における業者の姿勢に対してガッカリしたという声が聞かれているし、このままではもはや事業は推進できないと思う。

さらに言えば、地元にも事業の請負など、推進する立場として関わっている人たちもいるわけで、こんな説明会を運営されてしまっては、親業者と地域との板挟みになっている彼らにとっても本当に気の毒なことだと同情してしまう。

結局のところ、鴨川にもっと明確なビジョンがあり、鴨川のここを大切にしながら、こういうイメージの都市を目指すんだ、というものがないから、そして、行政も市民も共有されていないから、こういった事業が考え出され、不幸な対立が生まれてしまうのだと思う。
これは行政に責任を押し付けて解決するという問題ではない。鴨川市民全員、一人一人が考えるべき問題である。
みんなが自分の地元のことをそれぞれに思っているのは間違いないことで、その人たちがお互いに対立し、忌み嫌い合うなど、本当に悲しいことである。
まさに「ビジョンなき地域の悲劇」だ。

※私の表現の拙さによって、最後の段落について、行政批判に受け取られかねない、という御心配の声をいただきました。私は行政とタッグを組み、まちづくりを進めるというスタンスには変わりなく、この問題は鴨川市民も含めた全体、全員の問題であるということを訴えています。少々文章を整えさせていただきましたので、ご了承ください。


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− 2018年4月23日 17時43分 更新 by やまちゃん

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